深海

 

それは波の姿をしていた。

静かな日にも。

光に満ちた日にも。

理由もなく波を立て、

去ったと思えば
また戻ってきた。

見つかりそうになるたび
深く潜っていった。

 

波を追ううち、

深みにクジラがいた。

大きな影は何も語らず

先をゆく。

深く。

さらに深く。

波の生まれる場所まで。

 

そこにあったのは、

悲しみだった。

祈りだった。

痛みだった。

 

深く愛した

証だった。

 

そしてそれは

海の底でなお、

光り続けていた。

 

クジラは旋回する。

ひとつの祈りを囲むように。

 

海は静かになる。

波は海の夢だったかのように。

 

私は水面へ浮かび上がる。

知らない空が広がっている。

 

少し怖くて、

少し美しい。

 

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